野生らん探検隊2024 その2 ジガバチソウ・サイハイラン・エンシュウムヨウラン

ジガバチソウ 6/8


和名は似我蜂草の意。花の様子を身近な昆虫のジガバチにたとえたもの。

分布は北海道道南から九州。疎林や崖などに生える


地元で所属している植物団体の春の観察会でクモキリソウを確認していた折、「うちのあたりではジガバチソウのほうがよくある草」という会話を耳にした。北へ車で約1時間ほどの同じ県内。今年は時期をみて行かない訳にはいかない。ということで、6月の開花時期を狙い、そのあたりに住み、周辺の植物に詳しいY氏の案内を頼んだ。

車から降りた自生地はヒバの植林地だった。起伏はなくほぼ平らで林内は1mに満たない草がまばらに生え、見通しも風通しもよさそうな場所で、里山のどこにでもありそうな植林地の風景である。初めてのジガバチソウは10分ほど林床をうろついて見つかった。私は当初、見慣れたクモキリソウのようにぽつりぽつりと自生していると思いこんでいたのだが、ジガバチソウは隣り合わせの株が窮屈そうに、10数株が行列というか塊のように並んでいた。初めてなのでこのような自生地がふつうかどうかはわからないが、驚かされてしまった。早速を撮影。


現場では撮影できた喜びいっぱいで、花アップの写真は自宅に戻ってゆっくり観賞することにした。その姿は見れば見るほ愛嬌があった。なんだか笑いが込み上げてきた。かつて私たち若者に人気のテレビ番組「俺たちひょうきん族」に出てきそうなかぶり物キャラに思えて仕方なかったのだ。


サイハイラン 5/21


和名は采配蘭の意。昔の戦場で指揮を執るために持った采配に花を見立てたもの。分布は北海道~九州まで広く、山地や平地林の薄日のあり落ち葉などでふんわりした場所に自生。葉は冬緑で、開花前後に枯れる

私は、森を切り開いた栃木県宇都宮市郊外の分譲地に住んでいる。おかげで今でも周辺をちょっと歩くだけで早春にはコブシやキブシなどの花を簡単に見ることができる。

住み始めた初めての冬、その森を1時間ほどかけて歩いてみた。敷き詰められたコナラなどの落ち葉の中にすぐにサイハイランと判断できる、濃緑の一枚葉を見つけた。サイハイランは光合成だけの養分では生育できず、土中のラン菌の養分にもかなり頼っていると考えられている。栽培してもすぐに枯れることはないが気がつくと枯れていたという、一般には栽培に不向きの蘭としてよく紹介されている。そんなサイハイランを近所で目にしたのだから、とても感動した。

その後も冬に歩いてぽつりぽつりと株の存在を確認していた。ところがこの数年、自然度がアップしたかどうかはわからないが、これまでなかった場所でも多々見るようになっている。しかも、以前と異なり1カ所に4,5株単位なのだ。写真の場所も実は、終わりかけた花を含めると10数株はあった。

家から歩いて10分ほどのサイハイランの小群がどんな変遷をするのかこれからも見続けていきたいと思う。


エンシュウムヨウラン 6/8


先のジガバチソウ観察の折に、運よく出会ったのが本種である。ムヨウランという植物名を聞いたことはあったが、目にするのは初めてだった。帰宅後、使い慣れた図鑑を開いてみると、掲載された写真は花弁が完全に展開していて、花姿が違っていた。観察したのはまだ咲き始めなのだろうか? という疑問が浮かび、さらに本文を読んでいくと、東北南部から九州まで分布するムヨウランとは別に、この仲間は6種に細分化されているではないか。見たのはいったい何だろうか。さて、困った。結局、蘭に詳しいY氏へ写真を送り同定していただきわかったのがエンシュウムヨウランであった。しかし、もう少し詳しく知ろうとしても図鑑にその種が見当たらない。他との区別ポイントがわからない。結局、2011年に発行されたある図鑑とネットへ資料を広げてやっと理解した。

エンシュウムヨウランはウスキムヨウランの変種で、かつての分布は中部地方から九州であったが、じわりじわりと北上しているらしい。

記・はしば


 

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